金口の煙を相手
「幾つだ、あのお藤(ふじ)さんと云うのは?」
「行年(ぎょうねん)十八、寅の八白(はっぱく)だ。」
大井(おおい)はまた新に註文したウイスキイをひっかけながら、高々と椅子(いす)の上へあぐらをかいて、
「年まわりから云や、あんまり素直でもなさそうだが、――まあ、そんな事はどうでも好い、素直だろうが、素直でなかろうが、どうせ女の事だから、退屈な人間にゃ相違なかろう。」
「ひどく女を軽蔑(けいべつ)するな。」
「じゃ君は尊敬しているか。」
俊助(しゅんすけ)は今度も微笑の中(うち)に、韜晦(とうかい)するよりほかはなかった。と、大井は三杯目のウイスキイを前に置いて、金口の煙を相手へ吹きかけながら、
「女なんてものは退屈だぜ。上(かみ)は自動車へ乗っているのから下(しも)は十二階下に巣を食っているのまで、突っくるめて見た所が、まあ精々十種類くらいしかないんだからな。嘘だと思ったら、二年でも三年でも、滅茶滅茶に道楽をして見るが好(い)い。すぐに女の種類が尽きて、面白くも何ともなくなっちまうから。」
「じゃ君も面白くない方か。」
「面白くない方か? 冗談(じょうだん)だろう。――いや、皮肉なら皮肉でも好い。面白くないと云っている僕が、やっぱりこうやって女ばかり追っかけている。それが君にゃ莫迦(ばか)げて見えるんだろう。だがね、面白くないと云うのも本当なんだ。
